活動状況詳細

2023/2/17~18 熊本県人吉市大村横穴群東群の追加計測を実施しました

 大村横穴群は、横穴の掘られた入口脇の外壁に、浮き彫り状に動物・武器・武具や円文・三角文などの文様を表した装飾横穴墓です。JR人吉駅のすぐ北側にあり、 国史跡に指定されています。2021年度の事業として、大村横穴墓群の中でも中心となる東群で計測を実施しました。その際、横穴墓群が分布する崖面の上部については、 計測ができませんでした。大村横穴墓群東群では、管理している人吉市教育委員会によって、高所作業車を用いた除草作業が実施されてきました。しかし、 人吉市を含む球磨川流域に多大な被害をもたらした2020年7月の水害以降、除草作業が中断していました。横穴が分布する低い部分については、2021年度の事業で、 除草作業もあわせて委託して計測を行いました。横穴墓群の保全のためには、横穴墓が分布する上に広がる崖面についても、現状を計測しておく必要があります。 そのため高所作業車が必要な高い部分については、市教委による除草作業の再開後に、追加で計測を実施することとしていました。2022年度に、除草作業が再開されることとなり、 作業の実施時期に合わせて、追加の計測を行うこととしました。
 計測の実施に先立って、除草作業が始まった1月10日に藤澤が現地に赴き、打ち合わせを行いました。人吉市教育委員会の担当者の方々と、除草作業の進捗予定を踏まえ、 計測方法や実施時期などについて協議しました。2021年度の計測では、SfM法による計測を委託したため、今回も同様に行うこととしました。SfM法で使用する写真の撮影に あたっては、高い崖面の撮影が必要となるため、ドローンを用いることとしました。前回に計測を委託した九州で実績のある株式会社とっぺんで、これらの作業に対応できることから、 同社に委託しました。
 作業は、2月17日と18日の2日間で実施しました。基準となる評定点の観測と、ドローンによる写真撮影を現地で行っていただき、その後のデータ解析、 昨年度計測成果との合成も委託しました。作業の実施の際には、人吉市教育委員会の方に立ち会っていただきました。
 計測の実施にあたっては、人吉市教育委員会歴史文化課のみなさまから、多大なご協力をいただきました。ご協力いただいた方々に、深く感謝いたします。

①大村横穴墓群クレーン車を用いた除草作業(1月10日)

②大村横穴墓群撮影用ドローンの準備作業(2月17日)

参加者:研究代表者:藤澤
基準点測量:株式会社とっぺん
協力:人吉市教育委員会

2023/2/7 福岡県うきは市安富古墳の横穴式石室の計測を実施しました

 2023年2月6・7日に福岡県朝倉市にて湯の隈古墳と狐塚古墳の横穴式石室の計測を実施しました(前記事参照)。その際、うきは市教育委員会の担当者の方から ご相談が寄せられ、計測を実施することとなったものです。
 うきは市の安富(やすどみ)古墳は、直径約15mの円墳で、埋葬主体は副室構造の横穴式石室です。6世紀後半頃に築造されたと推定され、うきは市の史跡に 指定されています。古くから開口しており、現在も自由に立ち入りが可能です。うきは市域には、彩色による装飾古墳が多数存在しますが、安富古墳は装飾がないと 考えられてきました。近年、ごく浅く窪ませて表された装飾が、奥壁に存在する可能性が指摘されています。うきは市の担当者からのご相談を受け、SfM法による計測によって、 再現可能かどうかを検討する目的で、急遽計測を実施することとしました。
 朝倉市での計測作業が終了した後の2月7日午後に、うきは市に移動して計測用の写真撮影を実施しました。時間の関係もあり、計測は奥壁に限定して行いました。 一部の計測にとどまることから、小型の標尺を垂直に立てて、評定の代わりとしました。
 計測の実施にあたっては、朝倉市教育委員会からご協力をいただきました。深く感謝いたします。

安富古墳の計測状況

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:田尻・杉井、研究力者:鹿納、九州大学大学院生
基準点測量:有限会社グローバルプラン
協力:朝倉市教育委員会文化・生涯学習課

2023/2/6~7 福岡県朝倉市湯の隈古墳と狐塚古墳の横穴式石室の計測を実施しました

 2023年2月6・7日、福岡県朝倉市にて、湯の隈古墳と狐塚古墳の横穴式石室の計測を実施しました。湯の隈古墳は、直径20m程度の円墳で、埋葬主体は副室構造の 横穴式石室です。6世紀後半に築造されたと推定され、奥壁と側壁の一部に、彩色による装飾が施されています。古くから開口して装飾も風化が進んでいますが、 赤色顔料で同心円文などを描いています。朝倉市の史跡に指定されています。筑後川流域は彩色による装飾古墳が集中する地域ですが、南岸側がほとんどで、 湯の隈古墳のように北岸側に所在するものは少数です。この点からも湯の隈古墳は重要ですが、充分な調査が行われていませんでした。開口し風化の進行が憂慮されていることから、 本研究での計測対象としました。
 11月24日の視察と打合せを踏まえ、石室の石が組み合う間を深いところまで図化することと、装飾の色調の再現性について、SfM法の有効性を検討するために、 東北大学で計測用の写真撮影を行うこととしました。
 石室入り口と内部に、標定点測量用の仮基準点を設置しました。これを用いて、石室内の特徴のある場所を標定点として、トータルステーションで測量を行いました。 この作業は、九州大学の測量機材を用いて、同大学大学院生の協力を得て実施しました。
 石室外側に設置した仮基準点の公共座標値の測量は、地元の測量会社である有限会社グローバルプランに委託しました。7日に現地で打合せを行い、 後日に作業を行っていただくこととしました。
 計測用の写真撮影に際しては、照明方法が重要であることが、この間の検討によって明らかとなってきましたので、今回の計測では照明方法を工夫しました。 従来は、カメラの上と左右の3方向に、LEDランプを取り付ける方法をとってきました。今回は、新たにリング形のLEDランプを購入して試行しました。また、リング形ランプでは 撮影が難しい場所については、上下と左右の4方向にLEDランプを取り付ける方法も試しました。リング形LEDランプだけでは、光量が不足することが懸念される場合も、 4灯ランプを使用すると大きな光量が得られました。彩色による装飾があることから、写真撮影にあたっては、頻繁にカラーバランスをチェックしながら撮影を行いました。
 湯の隈古墳の計測作業と併行して、2月6日に狐塚古墳の石室の一部について、計測を実施しました。狐塚古墳は、副室構造の横穴式石室で、天井石が失われた状態で、 覆い屋のなかで保存されています。一部に線刻による装飾が施されています。線刻はかなり細いことから、細かな特徴まで再現することが求められます。撮影方法などを工夫し、 SfM法を用いて細い線刻を計測できるように試験する目的で、あわせて計測を試みることとしました。石室全体の計測は、規模が大きく時間的に難しいことから、 狐塚古墳は線刻部分のみを、湯の隈古墳石室の計測の際に計測することとなりました。一部の計測にとどまることから、評定点の設置・測量は行わず、小型の標尺を垂直に立てて、 評定の代わりとしました。
 今回は、研究分担者の杉井によってiPad Proを使用した3次元計測のテストを行いました。2020年以降発売のiPad Proは、搭載されたLiDAR(light detection and ranging) センサーで、簡便に3次元計測を実施できる機能が備えられています。同時に取得した画像データの色情報を合わせることで、テクスチャーも含めた3Dデータを取得できます。 計測方法のコツや精度、データ処理で使用するソフトなど、いろいろ検討すべき点がありますが、簡便な記録方法として有効であることが、今回のテストでも確認できました。 iPhone 12 Pro・iPhone 13 Proにも、同じシステムが搭載されており、今後はスマートフォンで、手軽に3Dデータを取得することが広がっていく可能性もあります。今後も、 このような機材を利用した3D計測についても、検討していく予定です。
 計測の実施にあたっては、朝倉市教育委員会文化・生涯学習課のみなさまから、多大なご協力をいただきました。 深く感謝いたします。

①湯の隈古墳の基準点・標定点の計測状況

②湯の隈古墳の計測状況(リング形LED照明使用状況)

③湯の隈古墳の計測状況(LED照明4灯使用状況)

写真準備中

④狐塚古墳の計測状況

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:田尻・杉井、研究力者:鹿納、九州大学大学院生
基準点測量:有限会社グローバルプラン
協力:朝倉市教育委員会文化・生涯学習課

2022/12/3~4 2022年度の研究会を開催しました

 2022年12月3日と4日に、東北大学において研究会を開催しました。本科研費の研究会としては、はじめての対面での開催となりました。 2日とも、東北大学総合学術博物館のとなりにある、理学研究科総合A棟の教室を会場としました。 なお、3日の研究会は、計測でご協力をいただいた自治体の文化財担当職員の方々に、オンラインでの参加を案内したところ、 熊本県教委、福島県須賀川市教委、同いわき市教委の文化財担当の方、4名のご参加をいただきました。
 なお、今回の研究会の際に、この科研費で計測した福島県いわき市中田横穴墓、熊本県人吉市大村横穴墓群、 福島県須賀川市前田川大塚古墳石室の計測点群データと、点群データを閲覧できるように、エリジオン社の 大規模点群処理ソフトInfi Pointsによって、PC用のViewerファイルと、Oculus用のViewerファイルを書き出し、 SSDに入れて研究分担者に配付しました。当該の自治体担当部署には、事前に送付しました。また、大村横穴墓群の装飾の一部について、 東北大学のArtec Evaのデータを利用し、1/5の縮尺で3Dプリンターで出力したものを、会場に持ち込んで参加者で検討しました。

  • 3日(土)
  • 13:30~18:00:研究会
    藤澤・鹿納「本研究での3次元計測成果について」
    福島県いわき市中田横穴墓、熊本県人吉市大村横穴墓群、福島県須賀川市前田川大塚古墳石室、宮城県仙台市仙台城二の丸千貫橋水落石垣の 計測成果を紹介し、それぞれで実施した計測方法について、意見交換を行いました。
    片岡「SfM法での計測誤差について-フォトグラメトリの実践-」
    SfM法での計測誤差について、石碑を利用した検証事例を紹介いただき、意見交換を行いました。
  • 4日(日)
  • 9:30~12:00:VR体験
    ゲームなどで利用されている、ヘッドマウントディスプレイのオキュラスを用いたVR体験を行いました。 総合学術博物館が、震災遺構のVR体験で実践してきた方法です。今回の科研費で計測した、中田横穴墓、熊本県人吉市大村横穴墓群などの データを利用しました。
  • 13:00~15:00:研究打合せ
  • 以下の内容について、打合せを行いました。
    • ◆2022年度の計測
    • ◎人吉市大村横穴墓群(2年目)
      1月前半に高所作業車を使用した除草作業後、中旬にSfM用にドローンを使用した写真撮影(委託)。 12月末か1月上旬に、現地で事前打ち合わせ。
      ◎福岡県朝倉市湯の隈古墳石室
      10月24日に、藤澤・鹿納・田尻で現地視察し、計測方法を検討した。
      2月前半にSfM用の写真を東北大学で撮影。基準点測量は委託する。
      ◎仙台城二の丸千貫沢水落石垣(3回目)
      継続した比較のため、年度内にSfM法で、3回目の計測を実施する。
    • ◆計測成果の報告について
    • ◎中田横穴:2023年3月刊行の、東北大学博物館紀要22に掲載予定。
      以前に計測した清戸迫横穴の成果も掲載したい。
      ◎須賀川市前田川大塚古墳石室:福島大学の調査報告で簡単に報告
      ◎大村横穴:今年度の計測成果を加えて、来年度に報告。
      ◎福島県考古学会での藤澤が講演予定
    • ◆サーバーの設置について
    • 半導体不足で設置が遅れていたが、年内に設置できる見込み。
    • ◆科研費HPについて
    • サーバー設置後公開の予定

 研究会終了後、時間の余裕のある参加者で、理学部自然史標本館で展示している、福島県清戸迫横穴の3Dプリンターで作成した模型などを実見し、 3次元計測データを利用した展示について意見交換を行いました。
 本科研費は、2020年度から始まりましたが、3年目にしてはじめて対面での研究会を実施することができました。

①3日 研究発表

②4日 VR体験

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:片岡・菊地・金田・田尻・杉井、研究力者:鹿納

2022/11/24 福岡県朝倉市湯の隈古墳の現地視察と打合せを行いました

 2022年11月24日、福岡県朝倉市にて、湯の隈古墳の現地視察と打合せを行いました。
 湯の隈古墳は、丘陵の中腹に築造された直径20m程度の円墳で、埋葬主体は副室構造の横穴式石室です。 石室形態などから、6世紀後半に築造されたと考えられています。奥壁と側壁の一部に、彩色による装飾が施されています。 古くから開口しており、装飾も風化が進んでいますが、赤色顔料で同心円文などを描いているのが確認できます。朝倉市の史跡に指定されています。
 筑後川流域は彩色による装飾古墳が集中する地域ですが、南岸側がほとんどで、湯の隈古墳のように北岸側に所在するものは少数です。 この点からも湯の隈古墳は重要ですが、これまで充分な調査が行われていませんでした。開口していることから、装飾の風化の進行が憂慮されています。
 2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨の際に、朝倉市では市内の各所で被害があり、 文化財も多数被災しました。この際に湯の隈古墳は被災していませんが、今後の保全を考えるとできるだけ早く3次元計測を実施し、 詳細なデータを残しておく必用があります。このような観点から、本研究で計測を実施することとしました。今回は、現地の状況を事前に視察し、 どのような計測方法を使用するかを検討し、関係機関との打合せを行いました。
 朝倉市教育委員会の担当者の方に立ち合っていただき、現地の状況を踏まえ、計測方法等を協議しました。 石室の石が組み合う間を、できるだけ深いところまで図化できることが望ましいこと、装飾の色調の再現性にも留意する必要があります。 以上の点を踏まえ、SfM法で計測することとし、東北大学で計測用の写真撮影を行うこととなりました。 彩色による装飾があることから、写真撮影の際に、カラーバランスのチェックを行う方法を検討しています。 石室内の標定点の計測は九州大学の測量機材を用いて行うこととし、石室外側に設置する基準点のGPS測量を地元の測量会社に委託することとなりました。
 湯の隈古墳の視察にあわせて、同市に所在する狐塚古墳の視察も行いました。狐塚古墳は、副室構造の横穴式石室で、天井石が失われた状態で、 覆い屋のなかで保存されています。一部に線刻による装飾が施されています。線刻はかなり細いことから、細かな特徴まで再現することが求められます。 撮影方法などを工夫し、SfM法を用いて細い線刻を計測できるように試験する目的で、あわせて計測を試みることとしました。 石室全体の計測は、規模が大きく時間的に難しいことから、狐塚古墳は線刻部分のみを、湯の隈古墳石室の計測の際に計測することとなりました。

湯の隈古墳の横穴式石室

②狐塚古墳の横穴式石室

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:田尻、研究力者:鹿納

2022/7/8 2022年度の研究打合せをオンラインで開催しました

 2022年7月8日13:00~14:30、ZOOMを利用したオンライン会議で、2022年度の研究打合せ会議を開催しました。報告と協議の内容は次のとおりです。

  1. 昨年度実施した計測結果の報告
    1. 福島県いわき市中田横穴
    2. 熊本県人吉市大村横穴群(東群)
    3. 宮城県仙台市仙台城跡二の丸地区千貫橋水落石垣
  2. ※1)と2)の点群データを閲覧できるように、エリジオン社の大規模点群処理ソフトInfi Pointsによって、PC用のViewerファイルと、Oculus用のViewerファイルを書き出し、 SSDに入れて研究分担者および当該自治体担当部署に送付の予定。
    ※東北大学のArtec Evaのデータを利用し、大村横穴群の装飾の一部を縮尺1/5で3Dプリンターで出力した。今後、実物を検討する機会を持ちたい。
  3. 今年度の計測場所の検討
    1. 福島県須賀川市前田川大塚古墳横穴式石室=昨年度事業の繰り越し6/17計測実施。
    2. 福岡県朝倉市湯の隈古墳横穴式石室
      • 田尻氏を窓口に調整。計測方法が課題。
    3. 熊本県人吉市大村横穴(東群)上部の岩盤部分
      • 人吉市による高所作業車を使用した除草作業後に実施(ドローンで撮影→SfM)
  4. 計測データをもとにした比較検討について
    1. 大村横穴群のデータを使用してSfM法と3Dスキャナのデータを比較検討
    2. 千貫橋水落石垣の地震前後の比較
  5. 計測が修了した成果の報告とデータの公開について
    1. 福島県いわき市中田横穴
      • 今年度に報告(担当:藤澤・鹿納・菊地)→東北大学博物館紀要
    2. 熊本県人吉市大村横穴
        今年度の計測成果を組み込んでから報告→来年度
     ※サーバーについて
      昨年度予算でサーバー設置予定であったが世界的な半導体不足のため繰り越し。
  6. 今年度の研究会の開催方法について
      2022年度も、コロナ感染症の状況を見ながらの研究活動になると思われます。研究会や計測時に集まって、議論できる機会を増やす方向で進めていくこととなりました。

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:片岡・菊地・金田・田尻・杉井、研究力者:鹿納

2022/6/17 福島県須賀川市前田川大塚古墳の横穴式石室の計測を実施しました。

 2022年6月17日に、福島県須賀川市にて、前田川大塚古墳の横穴式石室の計測を実施しました。前田川大塚古墳の横穴式石室は、 東北地方では最大規模の石室で、須賀川市の史跡に指定されています。2011年の東日本大震災による揺れによって、 石室が変形して不安定な状況となっていることから、早急に詳細な3次元データを取得しておくことが必要と判断し、本研究で計測対象としました。
 2021年11月29日に実施した現地視察と打合せを踏まえ、1月13日に計測を実施する予定でした。計測に向けては、 研究分担者である福島大学の菊地先生に事前準備を進めていただきました。石室内の壁面には、雨水が流れ込んで壁面に泥が付着している部分が多いことから、 計測に先立って泥を除去し清掃する作業を、福島大学の学生・院生の協力を得て実施しました。あわせて、 標定点の測量のために石室外に基準点を設置し、GPS測量で基準点の国土座標値を測量していただきました。これらの事前準備を進めたものの、 新型コロナ感染症第6波の拡大によって、計測を延期し経費を繰り越していました。感染症が落ち着いてきたため、6月17日に計測を行うことができました。
 前田川大塚古墳の横穴式石室は自然石を用いたもので、石材の組み合わせ方法を知るために、石材の間を、できるだけ深く計測することが必要です。 計測可能レンジが広いハンドヘルド型3Dスキャナを使用し、SfM法による計測と比較検討することとしました。
 計測作業は株式会社富士テクニカルリサーチに委託し、MANTIS VISION製(イスラエル)のハンドヘルド型3DスキャナF6 Smartを使用しました。 赤外線光源で特殊な図形パターンを照射し、赤外線カメラでパターンを捉える方法で計測します。計測可能レンジが0.5m~4mと広いことが特徴で、 専用ソフトを用いて短時間で計測が可能です。当該の機器については、同社より東北大学産学連携機構を通じて技術提案があり、実機のデモなどを経て、 今回採用することとなりました。 SfM法での計測では、東北大学の鹿納氏が写真を撮影し、魚眼レンズの使用を試みました。
 計測の実施にあたっては、須賀川市文化交流部文化振興課のみなさまから、多大なご協力をいただきました。深く感謝いたします。

ハンドヘルド型3Dスキャナでの計測状況

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:菊地、研究力者:鹿納
計測作業:株式会社富士テクニカルリサーチ
協力:須賀川市文化交流部文化振興課、東北大学産学連携機構

2022/4/13 宮城県仙台市仙台城跡千貫橋石垣の再計測を実施しました

 前の活動報告のとおり、2022年3月14~16日に、宮城県仙台市仙台城跡の二の丸地区にある千貫橋石垣の計測を実施し、16日にSfM用のデジタルカメラ写真の撮影を行いました。 その日の夜の23時36分に、福島県沖を震源とするマグニチュード7.4の地震が発生し、宮城県と福島県で最大震度6強の揺れを観測しました。福島県から宮城県にかけて、各地で被害が出ました。 仙台城では、本丸北西側の石垣の一部が崩壊し(写真参照)、広い範囲で石垣のはらみ出しなどの被害がありました。前年の2021年2月13日にも、福島県沖を震源とするマグニチュード7.3の地震が 発生し、宮城県と福島県で最大震度6強を観測していました。この2021年の地震で被害を受けていた石垣が、今回の地震で大きな被害を出すこととなりました。
 千貫橋石垣は、翌日に目視で点検したところ、石のずれや石材の剥落もなく、被害は確認できませんでした。今回の科研費での研究には、地震などの災害での変化や経年変化を、 3次元データとして把握する方法の検討も含まれています。目視では被害は確認できませんでしたが、3次元データで比較するため、同じ方法で再度、千貫橋石垣の計測を行うこととしました。 清掃は前回実施していたため、SfM用の写真撮影を4月13日に実施しました。前回同様に、撮影用の7.5mまで伸びる伸縮ポールを利用して撮影しました。 今回の計測ではポンプの設置ができなかったため、水流はそのままの状態で撮影しました。
 千貫橋石垣の計測では、基準点と標定点の測量が未了でした。そのため4月20日に、これらの測量を実施しています。今後、地震以前のデータと、地震以後のデータを比較検討していく予定です。

3月16日の地震で崩壊した仙台城本丸地区の石垣

参加者:研究代表者:藤澤、研究力者:鹿納