活動状況詳細

2022/3/14~16 宮城県仙台市仙台城跡千貫橋石垣の計測を実施しました

 2022年3月14日から16日に、宮城県仙台市仙台城跡の二の丸地区にある千貫橋石垣の計測を実施しました。
 仙台城は、仙台藩初代藩主の伊達政宗によって1600年から築城が開始された近世城郭です。1638年には、二代藩主伊達忠宗によって、 本丸の北西に二の丸が造られ、これ以降は二の丸が仙台城の中枢となっていきます。二の丸は、現在の東北大学川内南キャンパスにあたります。 二の丸地区の北端には沢が流れていますが、二の丸が置かれていた時期には土橋でせき止められ、上流側は堀となっていました。 この土橋は現在の川内南地区に入る道路として使われています。土橋の下流側である東側には石垣が設けられ、石垣の中央は一段低くなって、 水が流れ落ちるように造られています。江戸時代の文献資料には「千貫橋石垣」「千貫橋水落石垣」などと記載されています。
 城郭などの石垣などでは、経年変化を監視することが重要です。SfM法による3次元計測で、経年変化や災害時の変化を立体的にとらえることが 可能となれば、これら文化財の保護に有効な手段となることが期待されます。そのためには、同じ対象を別な時点に計測した場合の、 データの正確性などを検証しておくことが必要となります。このように、時間をあけて繰り返し何回も計測を行うことから、 東北大学構内に所在する千貫橋石垣が好都合と判断し計測対象としました。
 この石垣には常に水が流れていることから、上流側にポンプを設置しホースで下流側に流し、計測の際にはホースを移動しながら 作業することとしました。前の週に、ポンプなどの仮設工事と下草刈りなどの作業を、工務店に委託して準備しておきました。 14日と15日は石垣の清掃などの作業を行い、16日にSfM用の写真を撮影しました。
 石垣の高さは7mを超えることから、高い部分の撮影方法が課題となります。樹木が近くまで繁茂していること、 ドローンの利用には制約が多いことから、撮影用の7.5mまで伸びる伸縮ポールを利用し、2名でポールを支えて撮影しました。
 計測の実施にあたっては、文学部学生・文学研究科大学院生の協力を得ました。本部事務機構の財務部資産管理課には、 学内関係部署への連絡調整などで、多大なご協力をいただきました。深く感謝いたします。

① 千貫沢石垣の全景

② ポールを利用したSfM用写真の撮影状況

参加者:研究代表者:藤澤、研究力者:鹿納
協力:東北大学本部事務機構財務部資産管理課

2021/12/20~24 福島県いわき市中田横穴墓の計測を実施しました

 2021年12月20日から24日に、福島県いわき市にて、中田横穴の計測を実施しました。 中田横穴は、1969年に道路工事の際に発見され、一番大きな1号横穴は、玄室の前にもう一つ前室が造られた 複室構造で、玄室壁面に三角形文を描く装飾横穴で、国史跡に指定されています。
 11月11日の現地視察と打合せを踏まえ、彩色を伴う装飾古墳であることと、壁面の細かな凹凸や線刻による下書きを明瞭に記録する 必要があることから光学式非接触ハイエンド3Dスキャナ(ストラクチャードライトスキャナ)とSfM法を併用することとしました。 計測作業は株式会社シン技術コンサルに委託し、ストラクチャードライトスキャナは、HEXAGON(旧AICON)社 SmartSCAN(平面分解能159μm)を使用しました。
 彩色による壁画への影響を避けるため、急激な環境変化がないよう、内部の温湿度を計測しながら計測を行いました。 形状が複雑で3Dスキャナでは計測が難しい部分と床面については、SfM法を使用しました。それ以外は3Dスキャナでデータを取得 しています。なお入口に設けられている保護施設とその周囲については、据え置き型レーザー計測器で計測しています。
 計測の実施にあたっては、いわき市文化スポーツ室・観光交流室の文化振興課のみなさまから、多大なご協力をいただきました。 深く感謝いたします。

① 中田横穴でのSmart SCANでの計測状況

写真掲載予定

② 保護施設内に設置したPCでのデータ処理作業

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:菊地、研究力者:鹿納
計測作業:株式会社シン技術コンサル
協力:いわき市文化スポーツ室・観光交流室文化振興課

2021/12/13~15 熊本県人吉市大村横穴墓群東群の計測を実施しました

 2021年12月13日から15日に、熊本県人吉市にて、大村横穴墓群東群の計測を実施しました。 大村横穴群は、横穴の掘られた入口脇の外壁に、浮き彫り状に動物・武器・武具や円文・三角文などの文様を表した 装飾横穴墓です。JR人吉駅のすぐ北側にあり、国史跡に指定されています。
 10月18日の現地視察と打合せを踏まえ、SfM法による計測を委託すると同時に、ハンディ3Dスキャナでの計測を行い、 比較検討することとしました。SfM法による計測は、九州で実績のある株式会社とっぺんに委託しました。 前の週の12月6日から8日に、計測対象区域の草の除去などの清掃作業と、基準点と標定点の設置と観測作業、 SfM用の撮影作業を実施していただきました。
 13日には、科研費関係者も合流し、ハンディ3Dスキャナは東北大学からArtec Eva、九州大学から Artec Space Spiderを持ち込み、装飾部分を計測して比較データを取得しました。Space Spiderでの計測では、 九州大学の大学院生・学生諸氏の多大なご協力を得ました。
 現地での作業は14日にほぼ終了し、同日夕方には、東北大学から持参したヘッドマウントディスプレイ( HMD) Oculusを使用して、VR体験を参加者で行い、意見交換をしました。翌日の15日には、 以前に作成され保管されていたレプリカの計測も、九州大学チームで試みました。
 計測の実施にあたっては、人吉市教育委員会歴史文化課のみなさまから、多大なご協力をいただきました。 また調査中には、熊本県教育委員会の有志の方々や、熊本県内の文化財保護行政関係者の方も現地にお越し頂き、 有益な意見交換ができました。ご協力いただいた方々に、深く感謝いたします。

① ハンディ3Dスキャナ(Artec Eva)での計測状況

② ハンディ3Dスキャナ(Artec Space Spider)での計測状況

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:杉井、田尻、研究力者:鹿納
計測担当:株式会社とっぺん
協力:人吉市教育委員会

2021/11/29 福島県須賀川市前田川大塚古墳の事前現地視察と実施打合せを行いました

 2021年11月29日、福島県須賀川市にて、前田川大塚古墳の現地視察と打合せを行いました。
 前田川大塚古墳は、発掘調査は実施されていませんが、直径30m以上の円墳と考えられています。横穴式石室が古くから開口しており、 副葬品などは知られていませんが、石室の様相から6世紀後半に築造されたものと考えられています。以前に石室の測量調査が行われており、 須賀川市の史跡に指定されています。
 2011年の東日本大震災による揺れによって、石室石材が各所で緩んで動き、以前の測量図と比べると、大きく変形している部分も確認できます。 東北地方太平洋側では、近年も大きな地震が相次いでおり、憂慮される状況です。変形して不安定な状況となっている前田川大塚古墳については、 早急に詳細な3次元データを取得しておくことが必要と判断し、本研究で計測対象とすることとしました。
 須賀川市の担当者の方々に立ち合っていただき、現地の状況を踏まえ、計測方法などを協議しました。石室石材が緩んだ影響と推定されますが、 雨水が石室内に流れ込んで壁面に泥が付着している部分が多いことから、計測に先立って泥を除去し、清掃する必要があることが明らかとなりました。 研究分担者の菊地先生に、福島大学の学生・院生の協力を得て清掃を行っていただくこととなりました。当古墳の横穴式石室は自然石を用いたもので、 石材の組み合わせ方を知るために、石材の間について、どこまで深く計測できるかが課題となります。計測可能レンジが広いハンディ3Dスキャナを使用し、 SfM法による計測と比較検討することとしました。また、石室が不安定となって危険なため、石室入り口に侵入防止のためのフェンスによる出入口を年度内に 設置する予定となっていることから、その工事と日程を調整しつつ、計測を実施することとなりました。

写真準備中

前田川大塚古墳横穴式石室

参加者:研究代表者:藤澤、研究力者:鹿納

2021/11/11 福島県いわき市中田横穴の事前現地視察と実施打合せを行いました

 2021年11月11日、福島県いわき市にて、中田横穴の現地視察と打合せを行いました。
 中田横穴は、1969年に道路工事で丘陵を削った際に、5基の横穴墓が発見されました。 一番大きな1号横穴は、玄室の前にもう一つ前室が造られた複室構造で、玄室壁面に三角形文を描く装飾横穴で、国史跡に指定されています。 入口に、外気の影響を避けるための保護施設が設置されています。武器・馬具など多数の副葬品が出土し、6世紀後半に築造されたと考えられます。
 福島県内には彩色による装飾横穴が分布しますが、主要な4基の中で、3次元計測がなされていないのは中田横穴だけとなっていることから、 本研究での計測対象としました。当初は、2020年度の事業として計測を予定していましたが、コロナ感染症のため予算を繰り越し、 2021年度に実施することとなりました。10月11日に、藤沢がいわき市役所の担当課を訪問し、実施への協力を要請し打合せを行っており、 それを踏まえて現地視察と実施打合せとなりました。
 いわき市の担当者の方々に立ち合っていただき、現地の状況を踏まえ、計測方法などを協議しました。彩色を伴う装飾古墳であることと、 壁面の細かな凹凸や線刻による下書きを明瞭に記録する必要があることから光学式非接触ハイエンド3DスキャナとSfM法を併用することとしました。 これは、福島県双葉町の清戸迫横穴で実施した方法と、同じ方法となります。

中田横穴保護施設

参加者:研究代表者:藤澤、研究力者:鹿納

2021/10/18 熊本県人吉市大村横穴群の事前現地視察と実施打合せを行いました

 2021年10月18日、熊本県人吉市にて、大村横穴群の現地視察と打合せを行いました。
 大村横穴群は、横穴の掘られた入口脇の外壁に、浮き彫り状に動物・武器・武具や円文・三角文などの文様を表した装飾横穴墓です。 JR人吉駅のすぐ北側にあり、国史跡に指定されています。
 2020年7月3日から4日にかけての豪雨によって、球磨川流域では各所で災害が発生し、人吉市街は広範囲に浸水し甚大な被害を受けました。 人吉駅を通るJR肥薩線も不通になったままです。横穴のある岩盤は、アンカーによる補強もなされており被害はありませんでしたが、 すぐ脇で土砂崩れが発生しています。このように大村横穴群は、早急に3次元計測を実施し、詳細なデータを残しておく必用性と緊急性が高いと考え、 本研究で計測を実施することとしました。今回は、現地の状況を事前に視察し、どのような計測方法を使用するかを検討し、関係機関との打合せを行いました。
 人吉市教育委員会の担当者の方々に立ち合っていただき、現地の状況を踏まえ、計測方法などを協議し、大村横穴墓群の中でも中心となる東群を計測対象と しました。水害後、例年実施されてきた高所作業車を用いた除草作業が中断していることを踏まえ、横穴の分布する区域については2021年度に計測を実施し、 それより上部の自然の岩盤の部分は、高所作業車による除草作業が実施された後に、計測を行うこととなりました。計測方法は、SfM法による計測を委託する他、 ハンディ3Dスキャナでの計測を行い、比較検討することとなりました。
 熊本県教育委員会で3次元計測を進めておられる方も現地にお越し頂き、有益な意見交換ができました。大村横穴群の視察後は、 水害による人吉城跡の石垣などの被害状況の視察を行うことができました。また人吉市に伺う前には、熊本市の塚原古墳群において、熊本地震での被害状況を 視察し、熊本市の担当者の方々にご説明いただきました。いずれにおいても、文化財の保全のために3次元計測が有効であることを、 あらためて知る機会となりました。ご協力いただいた方々に、深く感謝いたします。

大村横穴群

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:杉井、研究力者:鹿納

2021/7/30 2021年度の研究打合せ・研究報告会をオンラインで開催しました

 2021年7月30日10:30~12:00、ZOOMを利用したオンライン会議で、2021年度の研究打合せ会議と研究報告会を開催しました。
 昨年度に実施を計画していた福島県いわき市中田横穴の計測を繰り越したことの報告と、2021年度の事業の進め方について検討しました。 繰り越した中田横穴の計測を行うとともに、熊本県人吉市大村横穴と、可能ならもう一ヶ所の計測を行う方向で、コロナ感染症の状況を見つつ 準備することなどを話しあいました。 研究報告は、鹿納晴尚氏(東北大学総合学術博物館)から、「SfM法の計測に使用するカメラの撮影距離と解像度」として、2020年度に実施した 東北大学正門などの計測事例をもとに、カメラの機材ごとの、撮影距離と解像度の関係について発表していただきました。

参加者:研究代表者:藤澤、研究分担者:片岡・菊地・金田・田尻・杉井、研究力者:鹿納

2021/6/24(事前清掃6/9)
東北大学片平キャンパスで保管されている宮城県名取市経の塚古墳の石棺を計測しました

 宮城県名取市の経の塚古墳からは、1923年に工事で石棺が出土し、当時の東北帝国大学医学部解剖学教室の長谷部言人のもとで、 人骨や副葬品とともに収蔵・保管されることになりました。その後、考古学研究室の保管となり、片平地区の考古学陳列館の横に置かれています。 6枚の板石を組み合わせた長持形石棺で、古墳時代中期前半のものと考えられています。これまで詳細な実測図は作成されていません。
 この石棺は内部が狭く、通常の方法では計測が難しいという問題がありました。シン技術コンサルの小池氏より、 魚眼レンズを使用して内部を撮影し、SfM法で3次元化する方法の提案を受け、試してみることとなりました。 片側の小口板が一部破損して外せることから、そこを外して内部の計測を行うこととしました。外面は、通常のデジタルカメラで撮影し、 内部と合わせてSfM法で3次元化することを試みました。同時に、据え置き型のレーザー計測器による計測、ハンディ3Dスキャナ(Artec Eva) も同時に実施し、それぞれのデータを比較検討できるようにしました。

①魚眼レンズを装着したデジタルカメラでの内部の撮影

②SfM用デジカメ写真の撮影

③ハンディ3Dスキャナでの計測

参加者:研究代表者:藤澤、研究力者:鹿納
協力:小池雄利亜・志村将直(シン技術コンサル)、石橋宏(東北大学埋蔵文化財調査室)